· HARUBOUYA · analytics · 12 min read
「データ分析で効果があった」と言えるまでに必要なこと
施策の後に数字が上がりました。それだけでは効果があったと言えません。比較対象の置き方、期間の切り方、差が誤差かどうかの見分け方を書きます。

施策を出しました。翌週の数字が上がりました。報告では「効果がありました」と書きます。
ここで止まると、次に同じ施策を打っても再現しません。上がったことと、施策が上げたことは別だからです。
何があれば「効果があった」と言えるのか。順に書きます。
問題:前後比較だけでは分からない
施策の前後で数字を比べるやり方には、施策以外の理由が全部混ざります。
| 混ざるもの | 例 |
|---|---|
| 季節 | 月末、給料日、連休、気温 |
| 他の施策 | 同じ週に打った広告、メール配信 |
| 外の出来事 | 天気、報道、競合のセール |
| 自然変動 | 何もしなくても、週によって上下します |
前週比が5%上がったとして、そのうち施策ぶんが何%かは、前後比較だけでは分けられません。
仕組み:比較対象を作る
効果を言うには、施策を受けていない相手が要ります。
| 方法 | 内容 | 精度 | 手間 |
|---|---|---|---|
| A/Bテスト | 対象をランダムに2つに分け、片方だけに出します | 高いです | 仕組みが要ります |
| 対象外グループとの比較 | 施策の対象外の層と、同じ期間で比べます | 中 | 低いです |
| 前年同期比 | 1年前の同じ期間と比べます | 低いです | 低いです |
| 前後比較のみ | 施策の前後で比べます | 参考程度 | なし |
可能なら常にA/Bテストです。ランダムに分けている限り、季節も天気も両方に等しくかかるため、差分が施策の効果になります。
A/Bテストが使えない場合
全員に出さざるを得ない施策(サイト全体の改修など)では、次善の策を取ります。
- 施策の影響を受けない指標を1つ選び、同じ期間で動いていないことを確認します
- 同じ期間に他の施策を打たないでください
- 施策の対象になりにくい層(例:別のチャネルから来た人)を参照に使います
期間の切り方
前後で同じ長さにする
「施策前1週間」と「施策後3日」を比べないでください。同じ曜日構成になるよう、7日単位で揃えます。
施策直後を含めない
出した直後は、一時的に跳ねることが多いです。
| 期間 | 扱い |
|---|---|
| 出した当日〜2日 | 除外します。告知効果と物珍しさが混ざります |
| 3日目〜 | ここから計測します |
| 2週間以降 | 定着したかを見ます |
必要な期間の決め方
どれくらいの差を見つけたいかで、必要な期間が決まります。
| 見つけたい差 | 必要な件数の目安(各グループ) |
|---|---|
| 大きい差(CVRが2倍など) | 各100件程度の成果 |
| 中くらい(+30%) | 各300件程度 |
| 小さい差(+5%) | 各数千件 |
「+5%を検出したい」なら、1日10件しか成果がない施策では何か月もかかります。始める前に、期間が現実的かを確かめます。
差が誤差かどうか
指標を1つに決める
始める前に、判断に使う指標を1つだけ決めます。
| 決めること | 例 |
|---|---|
| 主指標 | 購入率 |
| 副指標(悪化していないかの確認) | 平均注文金額、問い合わせ件数 |
| 判断の基準 | 購入率が相対で10%以上改善したら採用 |
後から指標を選ばないでください。5つの指標を見れば、そのうち1つはたまたま良く見えます。
目安
| 各グループの成果件数 | 言えること |
|---|---|
| 30件未満 | 数字で語りません。「判断できない」と書きます |
| 30〜100件 | 倍近い差なら傾向として扱えます |
| 100〜500件 | 20%以上の相対差 |
| 500件以上 | 10%以上の相対差 |
正式に言うなら、比率の差の検定(カイ二乗検定など)で確かめます。表計算ソフトでも計算できるため、報告の前に一度は通しておきます。
言い方を揃える
| 状況 | 書き方 |
|---|---|
| 差が十分 | 「購入率が2.1%から2.6%へ、相対で24%改善」 |
| 差が小さいです | 「差は確認できませんでした」 |
| 件数が足りません | 「件数が少なく、判断できない。◯月まで継続します」 |
「効果があったと思われる」で濁さないでください。3つのどれかで書きます。
やること
手順1. 始める前に1枚書く
施策:
主指標:
比較の方法:(A/B/対象外との比較/前年比)
計測期間:◯月◯日〜◯月◯日(直後2日は除外)
採用する条件:主指標が◯%改善
見る副指標:この紙を施策の前に作ります。後から作ると、結果に合わせて条件が動きます。
手順2. 除外する条件を決める
| 除外するもの | 理由 |
|---|---|
| 社内からのアクセス | 動作確認が混ざります |
| 自動化された巡回 | 人の行動ではありません |
| キャンセル・返品 | 成果として数えません |
| 期間中の障害発生時間 | 条件が違います |
手順3. 集計してから中身を見る
主指標の結果を出したあとで、属性別や流入別に分けて見ます。ただし、分けた結果で判断を変えません。分けた結果は次の仮説に使います。
手順4. 結果を残す
採用・不採用にかかわらず、1施策1行で記録します。
| 日付 | 施策 | 主指標 | 結果 | 判断 |
|---|---|---|---|---|
| 2月3日 | カート内の送料表示 | 購入率 | 2.1%→2.6% | 採用 |
| 2月10日 | ボタンの色変更 | 購入率 | 差なし | 不採用 |
不採用の記録が一番価値があります。同じことを半年後にもう一度試すのを防げます。
失敗例
| 失敗 | 何が起きるか | 代わりにやること |
|---|---|---|
| 前後比較だけで効果を言います | 季節や他施策の影響が混ざります | 比較対象を作ります |
| 結果を見てから指標を選びます | どんな施策でも「効果あり」になります | 主指標を1つ、事前に決めます |
| 施策直後から計測します | 一時的な跳ねを効果と誤認します | 最初の2日を除外します |
| 期間の長さが前後で違います | 曜日構成の差が混ざります | 7日単位で揃えます |
| 件数が少ないまま結論を出します | 偶然を再現性のある成果として扱います | 「判断できない」と書きます |
| 同じ週に複数の施策を打ちます | どれが効いたか分けられません | 期間をずらします。無理ならA/Bで分けます |
| 不採用の結果を残しません | 同じ施策を繰り返します | 1施策1行で記録します |
まとめ
- 上がったことと、施策が上げたことは別です。前後比較だけでは分けられません
- 効果を言うには、施策を受けていない比較対象が要ります。可能なら常にA/Bテスト
- 主指標は1つ、始める前に決めます。後から選べばどんな施策も成功になります
- 施策直後の2日は除外します。期間は7日単位で揃えます
- 見つけたい差の大きさから、必要な件数と期間を先に見積もります
- 「効果があったと思われる」で濁さないでください。差がある/ない/判断できないで書きます
- 不採用の記録を残します。同じ施策の繰り返しを防げます
最初にやることは、施策を出す前に7行の紙を書くことです。これがあるだけで、報告の会話が「上がりましたね」から「採用します」に変わります。
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