· HARUBOUYA · analytics · 12 min read
店舗送客の効果を、どう測るか
オンラインの施策が来店につながったかは、完全には測れません。測れる範囲と測れない範囲を切り分け、何をもって効果ありとするかを決める手順を書きます。

「オンラインの施策で来店が増えたか」を聞かれて、答えに詰まる場面は多いです。ECなら購入まで一本でつながりますが、来店は途中で線が切れます。
ここで完全に測ろうとすると、いつまでも始まりません。測れる範囲を先に決めて、それ以外は測れないと明示します。この割り切りが要ります。
問題:線が切れる場所
オンラインの接触(広告・メール・アプリ通知)
↓ ここは記録が残る
サイトやアプリでの行動
↓ ← ここで線が切れる
来店
↓
店舗での購入切れる理由は単純で、来店した人が「オンラインで見たから来た」と名乗らないからです。名乗らせる仕組みを作るか、推定するかのどちらかになります。
測り方の4つの型
| 型 | 仕組み | 精度 | 手間 |
|---|---|---|---|
| 1. 引換の仕掛け | クーポン・予約・取り置きを経由させます | 高いです | 中 |
| 2. 会員IDでの突合 | オンライン接触と店舗購入を会員IDでつなぎます | 高いです | 高い(統合が前提) |
| 3. 対象と非対象の比較 | 配信した層としなかった層で来店率を比べます | 中 | 低いです |
| 4. 地域・期間の比較 | 施策を出した地域と出さない地域で比べます | 低いです | 低いです |
まず3番から始めます。仕組みを作らずに始められて、比較の考え方も身につきます。
型1:引換の仕掛けを経由させる
オンラインから店舗へ行くときに、必ず通る場所を作ります。
| 仕掛け | 測れるもの | 注意 |
|---|---|---|
| 店舗で使えるクーポン | 使用された件数 | 使わない人は測れません |
| 取り置き・在庫確認 | 申込件数と来店率 | 対象商品が限られます |
| 来店予約 | 予約数と来店率 | 予約文化のない業態では使えません |
| アプリの提示 | 提示件数 | 店舗オペレーションの協力が要ります |
**どれも「使った人しか測れない」**です。使用率が3割なら、実際の送客はその3倍以上あります。ここを混同しません。
計測の設計は次のとおりです。
| 記録する項目 | 用途 |
|---|---|
| 発行日時・発行経路 | どの施策からか |
| 使用日時・使用店舗 | どこで、いつ |
| 会員ID | 同一人物の追跡 |
| 購入金額 | 効果の金額換算 |
型2:会員IDで突合する
店舗とECの会員が統合されていることが前提です。
オンラインで接触した会員IDの一覧
↓
その中で、一定期間内に店舗購入した人の数
↓
接触していない会員の来店率と比較するこの型の落とし穴は、接触した人がもともと来店しやすい層であることです。メールを開く人は、もともと関心が高いです。この差を施策の効果と誤認しやすいです。
対処は次のどれかです。
| 対処 | 内容 |
|---|---|
| ランダムに配信を分けます | 同じ条件の人を2つに分け、片方にだけ配信します |
| 属性を揃えて比べます | 購入回数・最終購入日が近い層どうしで比べます |
| 過去の来店率で補正します | 施策前の来店率の差を引きます |
ランダムに分けるのが最も確実です。配信対象を1割だけ除外し、その1割と比べます。
型3:対象と非対象を比べる
仕組みが無くてもできます。
配信対象:10,000人 → 期間内に来店購入 420人(4.2%)
配信しない:1,000人 → 期間内に来店購入 310人 ÷ 1,000 = 3.1%
差:1.1ポイント
施策による来店:10,000 × 1.1% = 110人配信しない層を必ず作ります。「全員に配信したほうが売上が立つ」という反論は出るが、比較対象がないと効果を一度も証明できません。
除外する割合は5〜10%で足ります。
型4:地域や期間で比べる
店舗ごとに施策を出し分けられる場合に使います。
| 比べ方 | 注意 |
|---|---|
| 施策を出した地域と出さない地域 | 商圏の規模・客層を揃えます |
| 施策の前後の期間 | 季節・天候・近隣の競合の影響が混ざります |
精度は低いです。他の型が使えない場合の最後の手段として扱い、結論は「傾向」までにとどめます。
何をもって効果ありとするか
測り方を決めたら、判断の基準を先に書きます。
施策:
測り方:(型1〜4のどれか)
主指標:来店購入率
比較対象:配信除外群(全体の10%)
計測期間:配信日から14日間
効果ありとする条件:来店購入率が相対で15%以上高い
金額換算:来店購入率の差 × 対象人数 × 平均購入金額期間を先に決めます。来店は時間差が大きく、期間を伸ばせばいくらでも数字が積み上がります。
測れないものを明示する
報告資料に1行入れます。
※ 本施策の効果は、クーポン使用者および会員IDで突合できた
購入のみを対象としている。会員証を提示しない購入、
現金のみの購入は含まない。実際の送客はこれより多い。測れない範囲を書いたほうが、数字が信用されます。書かずに過小な数字を出すと「効果がない」と誤読されます。
やること
手順1. 店舗側の購入データに何が残るか確認する
| 確認する項目 | 有無 |
|---|---|
| 会員ID | |
| 購入日時 | |
| 店舗コード | |
| 商品・金額 | |
| 決済方法 |
会員IDが残っていなければ、型2は使えません。ここで使える型が決まります。
手順2. 会員証の提示率を数える
店舗購入のうち、会員IDが記録されている割合を出します。
| 提示率 | 使える型 |
|---|---|
| 7割以上 | 型2が使えます |
| 3〜7割 | 型2は参考値。型1・3と併用 |
| 3割未満 | 型1・3を中心にします |
手順3. 配信除外群を作る
配信システムの設定で、対象の5〜10%を毎回除外します。除外する人は固定しません。毎回ランダムに選び直します。
手順4. 1施策1行で記録する
| 日付 | 施策 | 測り方 | 対象 | 除外群 | 差 | 判断 |
|---|
失敗例
| 失敗 | 何が起きるか | 代わりにやること |
|---|---|---|
| 完全に測ろうとします | 設計が終わらず、何も始まりません | 測れる範囲を決めて始めます |
| 配信除外群を作りません | 効果を一度も証明できません | 5〜10%を毎回除外します |
| 接触した層としない層をそのまま比べます | もともとの関心度の差を効果と誤認します | ランダムに分けます |
| クーポン使用数を送客数として報告します | 実際より大幅に少なく見えます | 測れない範囲を明記します |
| 期間を決めずに集計します | 数字を後から積み増せます | 配信前に期間を固定します |
| 測れない範囲を書きません | 「効果がない」と誤読されます | 脚注に1行入れます |
| 除外する人を固定します | 特定の層が常に施策を受けられません | 毎回ランダムに選び直します |
まとめ
- 来店は途中で線が切れます。完全に測ろうとすると始まりません
- 測り方は4つです。引換の仕掛け/会員IDの突合/対象と非対象の比較/地域・期間の比較
- 仕組みが無くても、配信除外群との比較は今日から始められます
- 接触した層はもともと関心が高いです。ランダムに分けないと効果を過大に見てしまいます
- クーポン使用数は送客数ではありません。使わない人が大半
- 測れない範囲を脚注に書きます。書いたほうが数字が信用されます
- 期間を先に固定します。来店は時間差が大きく、伸ばせば積み上がります
最初にやることは、店舗の購入データに会員IDがどのくらい残っているかを数えることです。その割合で、使える測り方が決まります。
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