· HARUBOUYA · dataflow · 15 min read
GCPのツールを使ったらいくらになるのか試算してみる
BigQuery、Cloud Storage、Airflow、Looker Studioの費用の目安です。それぞれ何を数えて課金されるのかを整理し、小さなデータ基盤を組んだ場合の月額を実際に積み上げてみます。

「GCPでデータ基盤を作りたい。いくらかかるか」と聞かれて、すぐ答えられないことが多いです。使った分だけ払う従量課金のため、構成が決まらないと金額も決まらないことが原因です。
ただし、何を数えて課金されるかは決まっています。数える対象さえ分かれば、桁は出せます。ここでは主要な4つについて課金の単位を整理し、最後に小さなデータ基盤の月額を積み上げてみます。
前提
| 項目 | この記事での扱い |
|---|---|
| 単価 | Google Cloud の公式料金ページに掲載されている米ドル建ての金額 |
| リージョン | us-central1(米国アイオワ)の単価 |
| 為替 | 1ドル=154円で換算(2026年9月時点の水準) |
| 月の時間 | 730時間(24時間×約30.4日) |
東京リージョン(asia-northeast1)は米国より単価が高いです。公式の料金ページはリージョンを切り替えて表示する作りのため、実際の見積もりでは必ず東京に切り替えて確認します。この記事の金額は桁を掴むための下限と考えます。
1. BigQuery
データをためて集計する場所です。課金は「置いている量」と「読んだ量」の2つに分かれます。
読んだ量(クエリ)
| 区分 | 単価 | 円換算 |
|---|---|---|
| 毎月 1TiB まで | 無料 | 無料 |
| 1TiB を超えた分 | 6.25ドル/TiB | 約963円/TiB |
課金対象は「結果の行数」ではなくスキャンした列のデータ量です。SELECT * で全列読むと、1列だけ使う場合の何倍もかかります。クエリごと・テーブルごとに最低10MBが計上され、MB単位で切り上げられます。
置いている量(ストレージ)
| 種別 | 単価(GiB時間あたり) | 月額の円換算(1GiBあたり) |
|---|---|---|
| アクティブ論理 | 0.000031507ドル | 約3.5円 |
| 長期論理(90日間未変更) | 0.000021918ドル | 約2.5円 |
| アクティブ物理(圧縮後) | 0.000054795ドル | 約6.2円 |
| 長期物理 | 0.000027397ドル | 約3.1円 |
毎月10GiBまで無料です。1TiB を1か月置くと約3,600円です。90日間変更がなければ自動で長期料金に下がり、約半額になります。
データを入れるとき
| 方法 | 単価 | 補足 |
|---|---|---|
| バッチ読み込み | 無料 | 共有スロットプール利用時 |
| ストリーミング挿入(REST) | 0.01ドル/200MiB | 約1.5円/200MiB |
| Storage Write API(gRPC) | 0.025ドル/GiB | 毎月2TiBまで無料 |
1日1回のバッチで足りるなら、読み込みは無料です。リアルタイム性が要らないのにストリーミングを選ぶと、そこだけ課金が発生します。
2. Cloud Storage
ファイルの置き場です。CSVやログの一次置き場、Airflowのログ保存などに使います。
| クラス | 月額(1GiBあたり・円換算) | 最低保存期間 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|
| Standard | 約3.1円 | なし | 日常的に読み書きします |
| Nearline | 約1.5円 | 30日 | 月1回程度読みます |
| Coldline | 約0.6円 | 90日 | 四半期に1回程度 |
| Archive | 約0.19円 | 365日 | 法定保存など、ほぼ読みません |
注意点が2つあります。
- 最低保存期間より早く消すと、残り期間分も請求されます。30日置く前提のないデータを Nearline に入れると逆に高くなります
- 読み出しにも料金がかかります(Nearline 約1.5円/GiB、Coldline 約3.1円/GiB、Archive 約7.7円/GiB)。Standard は無料
操作(ファイルの書き込み・一覧取得など)にも課金があります。Standard の場合、書き込み系1,000回で約0.8円、読み取り系1,000回で約0.06円です。通常の使い方では誤差の範囲です。
外に出すときの通信料
| 宛先 | 0〜10TiB の単価 | 円換算 |
|---|---|---|
| アジア(中国を除く) | 0.12ドル/GiB | 約18.5円/GiB |
| 世界各地(アジア・豪州を除く) | 0.12ドル/GiB | 約18.5円/GiB |
| オーストラリア | 0.19ドル/GiB | 約29.3円/GiB |
アップロード(上り)は無料、ダウンロード(下り)が有料です。ここが見落とされやすいです。BIツールから毎日大量にデータを引き抜く設計にすると、通信料だけで膨らみます。
3. Airflow(Cloud Composer 3)
処理の順番と時刻を管理する司令塔です。「Aが終わったらBを動かす」を定義しておく道具です。
料金は次の式で決まります。
料金 ≒ DCU × 稼働時間 × 単価DCU(Data Compute Unit)は、環境が使うCPU・メモリ・ストレージをまとめた単位です。
| 項目 | 単価 | 円換算 |
|---|---|---|
| 標準 | 0.06ドル/DCU時間 | 約9.2円/DCU時間 |
| 確約利用割引 1年 | 0.054ドル/DCU時間 | 約8.3円/DCU時間 |
| 確約利用割引 3年 | 0.048ドル/DCU時間 | 約7.4円/DCU時間 |
| データベースストレージ | 0.000232877ドル/GiB時間 | 約26円/GiB月 |
24時間365日動かした場合の月額(720時間で計算)は次のとおりです。
| 平均DCU | 月額(ドル) | 月額(円換算) | 想定 |
|---|---|---|---|
| 6 DCU | 約259ドル | 約39,900円 | 軽い司令塔運用 |
| 12 DCU | 約518ドル | 約79,800円 | 日次バッチが中心の一般的な構成 |
| 24 DCU | 約1,037ドル | 約159,700円 | 高並列・ピークが重いです |
Airflowは、動かしている処理の重さではなく、環境を立てている時間で課金されます。ここが最大の落とし穴です。1日5分のバッチしか動かさなくても、環境を24時間立てていれば24時間分かかります。
ワーカー数は負荷に応じて自動で増減するため、暇な時間帯はDCUが下がります。ただしスケジューラなど常駐する部分は残るため、ゼロにはなりません。
4. Looker Studio
作ったデータを見るためのダッシュボードです。
| 区分 | 料金 | 円換算 |
|---|---|---|
| Looker Studio | 無料 | 無料 |
| Looker Studio Pro | 9ドル/ユーザー/月(プロジェクトごと) | 約1,390円 |
無料版で作成も閲覧もできます。Pro は管理機能やサポートが必要な場合の選択肢です。
ただしツール自体は無料でも、裏側のBigQueryへのクエリ料金はかかります。閲覧されるたびにクエリが走るため、見る人が増えるほどBigQuery側の請求が増えます。
なお Dataform(SQLの変換処理を管理する仕組み)も、それ自体の利用料はかからず、実行されたBigQueryのクエリ料金だけがかかります。
積み上げてみる
前提を次のように置きます。ECサイトの受注・会員・行動ログを日次で取り込み、10人程度が週次でダッシュボードを見る規模を想定します。
| 項目 | 想定 |
|---|---|
| BigQuery ストレージ | 2TiB(アクティブ論理) |
| BigQuery クエリ | 月8TiB スキャン |
| Cloud Storage | 500GiB(Standard) |
| Airflow | 小さめ・6 DCU・24時間稼働 |
| ダッシュボード | Looker Studio 無料版 |
| サービス | 計算 | 月額(円換算) |
|---|---|---|
| BigQuery ストレージ | 2TiB × 約3,600円 | 約7,300円 |
| BigQuery クエリ | (8−1)TiB × 約963円 | 約6,700円 |
| Cloud Storage | 500GiB × 約3.1円 | 約1,600円 |
| Airflow | 6 DCU × 720時間 × 約9.2円 | 約39,900円 |
| Looker Studio | 無料 | 0円 |
| 合計 | 約55,500円 |
年額にすると約67万円です。米国リージョンでの計算のため、東京リージョンではこれより上振れします。
構成を変えた場合の比較です。
| パターン | 月額(円換算) | 差分の理由 |
|---|---|---|
| 上記の標準構成 | 約55,500円 | — |
| Airflow を3年契約にします | 約48,000円 | DCU単価が2割引 |
| Airflow をやめて簡易なスケジューラにします | 約15,600円 | 常時稼働分が消えます |
| クエリが月30TiBに増えた場合 | 約76,700円 | スキャン量が課金に直結 |
費用の大半はAirflowの常時稼働分です。ここを見直すか否かで金額が倍近く変わります。
見落としがちな費用
| 項目 | 何が起きるか |
|---|---|
| 東京リージョンの単価差 | 米国基準で見積もると不足します |
| ストレージは減りません | 消す運用を決めないと毎月増え続けます |
| タイムトラベル・スナップショット | 物理ストレージ課金では過去分も課金対象 |
| BIからの繰り返しクエリ | 閲覧のたびにスキャン。利用者数に比例します |
| リージョン間のデータ転送 | 東京と米国をまたぐ構成にすると通信料が乗ります |
| 検証用に立てた環境 | 消し忘れがそのまま毎月請求されます |
やること
予算アラートを先に設定する
使い始める前に設定します。順番は次の通りです。
- Google Cloud コンソールを開きます
- 左のメニューから「お支払い」を選びます
- 「予算とアラート」を選びます
- 「予算を作成」ボタンを押します
- 対象のプロジェクトと、月の上限金額を入力します
- 50%・90%・100%で通知が飛ぶよう設定し、通知先のメールアドレスを入れます
上限を超えても自動で止まるわけではありませんが、気づかずに月末を迎える事態は防げます。
何にいくらかかったかを見る
- Google Cloud コンソールの「お支払い」を開きます
- 「レポート」を選びます
- 「グループ条件」で「サービス」を選びます
サービス別の内訳が出ます。ここで金額の大きい順に並べ、上位2つだけを見ます。
クエリの前に処理量を確認する
BigQuery の画面でSQLを書くと、実行ボタンの上あたりに「このクエリを実行すると○○が処理されます」と表示されます。実行前に必ずこの表示を見てください。想定より桁が大きければ、日付での絞り込みや列の指定が抜けています。
失敗例
| 失敗 | 何が起きるか | 代わりにやること |
|---|---|---|
SELECT * で書きます | 使わない列までスキャンし、料金が数倍になります | 必要な列だけ書きます |
| 日付で絞らずに全期間を読みます | 毎回テーブル全体をスキャンします | 日付の条件を必ず入れます。テーブルを日付で分割しておきます |
| 検証用のAirflow環境を消しません | 使っていないのに毎月4万円前後が乗ります | 検証が終わったら環境ごと削除します |
| ストリーミング挿入を既定にします | 1日1回で足りる処理にも課金が発生します | バッチ読み込みを既定にし、必要な箇所だけストリーミング |
| 古いデータをStandardに置き続けます | 読まないデータに最高単価を払います | 1年以上読まないものは Coldline か Archive へ |
| 米国リージョンの単価で社内承認を取ります | 東京で構築した後に予算超過します | 最初から東京の単価で見積もります |
まとめ
- GCPの費用は「置いている量」「読んだ量」「立てている時間」の3つで決まります
- BigQuery はスキャン量が主役です。
SELECT *と全期間スキャンが最大の無駄 - Cloud Storage は置き場所のクラス選びで単価が10倍以上変わります。ただし最低保存期間に注意
- Airflow は処理の重さではなく環境を立てている時間で課金されます。小規模でも月4万円前後から
- Looker Studio 自体は無料ですが、裏側のクエリ料金は閲覧者数に比例して増えます
- 小さなデータ基盤の実勢は月5万円前後です。うち大半がAirflowの常時稼働分
最初にやることは構成の検討ではなく、予算アラートの設定です。桁を間違えたときに気づける仕組みだけ先に作っておきます。
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