· HARUBOUYA · dataflow · 8 min read
引き継げるデータ基盤の条件。属人化を外す書き方
前任者しか触れない仕組みを作らないための3条件です。命名、手順書、連絡先の一覧まで、引き継ぎ資料の最小構成を並べます。

前任者が作った仕組みが、誰も触れない状態になっています。引き継ぎの場面でよく出てくる話です。
作った本人に悪気はありません。動いているものを作ったのですから、仕事はしています。それでも引き継げません。理由は、作り方ではなく、残し方にあります。
引き継げない基盤に共通する症状
引き継ぎの相談を受けたとき、私はまず次の3つを確認します。
テーブルや処理の名前を見ても、中身が想像できません。tmp、test、new、data2といった名前です。こういう名前が並んでいると、どれが本番でどれが使っていないものか、開けるまで分かりません。
手順が本人の頭の中にしかありません。「毎月5日に、この画面からCSVを落として、このフォルダに置く」のように書きます。これが書かれていないと、引き継いだ人は初回で止まります。
止まったときに誰に聞けばいいか分かりません。外部サービスとつないでいる場合、契約者が誰か、管理画面に誰が入れるかが分からないと、調べるところから始まります。
この3つが当てはまるなら、引き継ぎではなく作り直しになります。作り直しは、元の構築と同じかそれ以上の時間がかかります。
条件1:名前を見れば意味が分かる
一番効くのに、一番後回しにされるのが命名です。決めるのは3つだけで足ります。
- 何のデータか(注文、顧客、在庫)
- どの段階のものか(取り込んだまま、整形後、集計後)
- どの単位か(日次、月次、明細)
この3つを決まった順番で並べるルールにしておけば、名前を見ただけで役割が分かります。凝った命名規則は要りません。全員が同じ順番で書く、それだけです。
すでに動いているものの名前を変えるのは危険なので、まずは一覧表を作り、それぞれの役割を1行で書き足すところから始めてください。名前の変更は、次に作るものからで構いません。
条件2:手順が文章で残っている
図や設計書より先に、文章の手順書です。書く内容は次の4つです。
- いつ動くか(自動なのか、人が動かすのか)
- 動かす手順(画面名とボタン名まで書く)
- 正常に終わったときに、どこを見れば確認できるか
- 失敗したときに、何をすればいいか
ポイントは3つ目と4つ目です。ここが抜けている手順書をよく見ます。動かし方だけ書いてあっても、成功したかどうかが分からなければ、引き継いだ人は毎回不安になります。
文章は上手でなくて構いません。箇条書きで、専門用語を使わずに書きます。1つの処理につき、A4で1枚が目安です。
条件3:止まったときの連絡先が決まっている
意外と抜けるのがここです。次の4点を1枚にまとめてください。
- 使っている外部サービスの一覧と、契約者の名前
- それぞれの管理画面に入れる人
- 費用が発生しているもの、その支払い方法
- 困ったときの問い合わせ先(サポート窓口のURL)
この1枚がないと、引き継いだ人は「そもそも誰に聞けばいいのか」から調べることになります。技術的な難しさではなく、情報がないことで止まるケースです。
引き継ぎ資料の最小構成
完璧な資料を作ろうとすると、いつまでも終わりません。次の4点だけ用意してください。
- 全体図1枚(どこからデータが来て、どこへ行くか。手書きでよい)
- テーブルと処理の一覧表(名前と役割を1行ずつ)
- 処理ごとの手順書(1処理1枚)
- 連絡先の一覧1枚
これだけで、引き継ぎの初回で止まる確率はかなり下がります。
外注するときに書いておくこと
外部に構築を頼む場合は、契約の時点で「引き継ぎ資料の作成」を成果物に入れてください。口約束にすると、ほぼ作られません。悪意ではなく、優先度が下がるためです。
あわせて、引き継いだあとの質問対応期間も決めておくと安全です。1か月でも構いません。期間が明記されていれば、聞くほうも遠慮しなくて済みます。
属人化は、人の問題ではなく、書き残す時間を工数に入れていないことから起きます。作る時間の1割を残す時間に回します。それだけで、次の人が困らなくなります。
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