· HARUBOUYA · ai · 13 min read

社内でAIを使うルールを文書にする

「機密情報は入れない」だけでは運用できません。入れてよい情報の線引き、成果物の扱い、承認の流れの3つを決めます。実際に配れる形のルールをどう書くかをまとめます。

社内AI使用ルールの表紙のイメージ

社内でAIを使い始めると、必ず「ルールを作ってほしい」と言われます。そこで出てくるのが**「機密情報は入力しないこと」の1行だけ**の文書です。

これでは運用できません。何が機密かの判断が各人に丸投げされているため、慎重な人は何も使わず、そうでない人は何でも入れます。

実際に配れる形にするには、次の5つを書きます。

#書くことないと起きること
1使ってよいツール個人契約のツールが業務で使われます
2入れてよい情報の線引き判断が人によってばらつきます
3出てきたものの扱い生成物をそのまま提出してしまいます
4承認が要る場面勝手に外部へ連携されます
5困ったときの連絡先事故が起きても報告されません

1. 使ってよいツールを名前で書く

「生成AI」とまとめません。名前と契約形態を書きます。

ツール契約使ってよい範囲
全社契約のAIツール法人契約業務全般
個人で契約したツール個人業務では使用しません
社内システムに組み込まれたAI機能法人契約その機能の範囲内

分ける基準は、入力した内容が学習に使われない契約になっているかです。法人向けのプランはこの扱いが明記されていることが多いです。契約書や利用規約の該当箇所を、文書の中で引用しておきます。

2. 入れてよい情報の線引き

ここが本体です。3段階に分けると運用できます。

区分例扱い
入れてよいです公開されている情報、一般的な業務知識、自分で書いた文章の下書き制限なし
条件付き社内の手順書、議事録、設計の検討メモ認められたツールのみ。固有名詞を伏せます
入れません個人情報、顧客から預かったデータ、未公開の財務情報、パスワードや鍵例外なし

「入れない」は具体名で列挙します。「機密情報」という言葉だけでは誰も判断できません。

迷ったときの判断基準を1行で置く

それが社外に出ても問題ないか。判断がつかないなら入れません。

判断がつかないものを止めるのが目的なので、迷ったら止まる方向に倒す書き方にします。

固有名詞の伏せ方も書く

条件付きの情報を使いたい場面は多いです。伏せ方まで書いておくと、実際に使えます。

元置き換え
取引先の社名A社、取引先X
担当者名担当者A
システム名・サーバー名基幹システム、社内サーバー
金額の実数概算、または倍率で表現

3. 出てきたものの扱い

場面扱い
社内向けの下書きそのまま使ってよいです。ただし内容は自分で確認します
社外に出す文書必ず人が書き直します。事実は元資料で確認します
プログラム動作を確認し、外部の部品を含む場合はライセンスを確認します
画像・図既存の作品や商標に似ていないか確認します

共通して書くのは1行です。

AIが出したものの責任は、提出した人にあります。

「AIが間違えた」は通らないことを明記しておきます。

事実確認の手順も入れる

  1. 数値・固有名詞・日付は、元の資料で1つずつ確認します
  2. 出典を示された場合は、そのURLを実際に開きます
  3. 確認できないものは、その旨を書くか削除します

4. 承認が要る場面

日常の利用まで承認制にすると、誰も使わなくなります。承認が要るのは、外とつながるときだけに絞ります。

場面承認
ツールに文章を入力して下書きを作ります不要
社内データをファイルで読み込ませます不要(条件付きの範囲内)
社内システムとAIを連携させます必要
顧客向けのサービスにAIを組み込みます必要
新しいAIツールを業務で使い始めます必要

申請の書式も、同じ文書の末尾に付けておきます。項目は4つで足ります。

使いたいツール:
用途:
入力する情報の区分:(入れてよい/条件付き)
連携先:(ある場合のみ)

5. 連絡先と報告

事故は必ず起きます。報告しやすくしておくことが、防ぐことより重要です。

起きたことやること
入れてはいけない情報を入れてしまいましたすぐに連絡先へ報告。責任を問わない旨を明記します
誤った内容をそのまま提出しました上長と連絡先へ報告
不審な出力が出ました画面を保存して連絡先へ

「報告した人を責めない」と文書に書きます。この1行がないと報告が上がってきません。

やること

手順1. A4で2枚に収める

長い文書は読まれません。構成は次の通りです。

枚数内容
1枚目使ってよいツール、入れてよい情報の3区分、迷ったときの1行
2枚目成果物の扱い、承認が要る場面、連絡先、申請の書式

手順2. 部署ごとに1人、先に読んでもらう

配る前に、実際に業務でAIを使っている人に読んでもらい、次を聞きます。

  • いま自分がやっている使い方が、どの区分に当たるか分かるか
  • 判断に迷う場面が残っていないか

迷う場面が出たら、それを表の行として追加します。想定で書いた区分より、実例のほうが役に立ちます。

手順3. 更新の担当と頻度を決める

ツールも契約も変わります。文書の先頭に次を書きます。

最終更新:2026年◯月◯日
次回見直し:3か月後
管理:◯◯部

手順4. 置き場所を1か所にする

社内の文書ツールに1つだけ置き、そこへのリンクを配ります。ファイルを配布しません。配布すると古い版が残ります。

失敗例

失敗何が起きるか代わりにやること
「機密情報は入力しない」だけ書きます判断が人によってばらつきます入れてよい/条件付き/入れない の3区分を具体名で書きます
禁止事項だけを並べます誰も使わなくなり、導入した意味がなくなります「入れてよい」を先に書きます
すべての利用を承認制にします申請が面倒で、隠れて使われます承認は外とつながるときだけ
長い文書を作ります読まれませんA4で2枚に収めます
ファイルで配布します古い版が残り続けます1か所に置いてリンクを配ります
報告の窓口を書きません事故が起きても上がってきません連絡先と「責めない」旨を明記します
作って終わりにします契約やツールの変さらに追従できません見直し時期と管理部署を先頭に書きます

まとめ

  • 「機密情報は入力しない」の1行では運用できません。判断が各人に丸投げされます
  • 使ってよいツールは名前と契約形態で書きます。基準は入力が学習に使われないこと
  • 情報は「入れてよい/条件付き/入れない」の3区分です。入れないものは具体名で列挙します
  • 条件付きを使うための固有名詞の伏せ方まで書くと、実際に使える文書になります
  • 「AIが出したものの責任は提出した人にある」を明記します
  • 承認は外とつながるときだけに絞ります。日常利用まで承認制にすると誰も使いません
  • **「報告した人を責めない」**と書きます。この1行がないと事故が上がってきません

最初にやることは、いま社内で実際にどう使われているかを3人に聞くことです。想定で書いた区分より、実例から作った区分のほうが機能します。

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