· HARUBOUYA · pm · 13 min read
プロジェクトマネージャーは、結局何をすべきなのか
PMの仕事は進捗を聞いて回ることではありません。決めること、作るもの、週次の型、うまくいかないときの動き方を整理します。

「PMは何をする人か」と聞かれると、答えが人によって違います。進捗管理、調整役、板挟み、といったイメージがあります。どれも一部ではありますが、中心ではありません。
PMの仕事は2つに集約できます。決めることと、他の人が決められる状態を作ることです。ここから外れる作業は、やらなくてよいか、他の人がやったほうがよいです。
1. PMの中心にある仕事
決める
プロジェクトでは、毎日のように判断が求められます。
- どこまでを今回やり、どこから次回に回すか
- 2つの案のどちらを採るか
- 遅れたとき、何を削るか
決めないことが、最も大きな遅延を生みます。 決まらないまま作業が進むと、あとで作り直しになります。
決められない場合は、いつ、誰が、何をもって決めるかを決めます。これも判断の一つです。
決められる状態を作る
自分で決められないことのほうが多いです。その場合にやることは、判断できる材料を揃えて、決める人の前に出すことです。
| 揃えるもの | 内容 |
|---|---|
| 選択肢 | 2〜3案。1案だけでは判断になりません |
| 影響 | 費用、期間、リスクへの影響 |
| 推奨 | PMとしてはどれを推すか、理由 |
| 期限 | いつまでに決める必要があるか |
「どうしましょう」と聞かないでください。 「A案を推します。理由は納期です。Bにする場合は2週間延びます。今週中に判断が必要です」と出します。
2. PMが作るもの
道具は多くありません。この6つで足ります。
| 作るもの | 役割 | 更新頻度 |
|---|---|---|
| 体制図・役割分担 | 誰が何を決めるか | 開始時、変更時 |
| スコープ定義 | やること・やらないこと | 開始時、変更時 |
| スケジュール | 工程と期日、依存関係 | 週次 |
| 課題管理表 | 起きている問題と担当 | 随時 |
| リスク一覧 | 起きていないが起きうること | 隔週 |
| 決定ログ | 何を、いつ、誰が決めたか | 決めたとき |
やらないことを書く
スコープ定義で重要なのは、**「やること」より「やらないこと」**のほうです。
やること : 受注データの取り込み、日次更新、管理画面での閲覧
やらないこと: 在庫データの取り込み(次フェーズ)
リアルタイム更新(日次で合意)
既存システムの改修やらないことが書かれていないと、「当然やってくれると思っていた」が終盤に出ます。
決定ログを軽視しない
「あの件、どうなりましたっけ」が最も時間を奪います。 決めたことを1行ずつ残します。
2026-07-02 更新頻度は日次(6時)とする。決定:発注元 / 理由:即時連携は費用対効果が合わないため
2026-07-09 対象期間は過去2年分。決定:発注元 / 理由:それ以前は元データの品質が不明なためこの1行があるだけで、蒸し返しが減ります。担当が代わったときにも効きます。
3. 週次の型
毎週やることを固定します。これが回っていれば、プロジェクトはだいたい持ちます。
| やること | 内容 |
|---|---|
| 進捗の確認 | 予定と実績の差。「何%」ではなく「何が終わったか」 |
| 課題の棚卸し | 新規の追加、解決済みの消し込み、放置されているものの再割り当て |
| 来週の確認 | 誰が何をやるか、止まりそうな箇所 |
| 決定事項の記録 | その場で決まったことを書きます |
| リスクの確認 | 隔週でよいです |
進捗を「%」で聞かないでください。 90%のまま2週間動かないことが起きます。「何が終わって、何が残っているか」で聞きます。
会議で聞くこと
| 聞くこと | 引き出したいこと |
|---|---|
| 終わったものは何か | 事実 |
| 止まっているものはあるか | 課題 |
| 誰かの返事を待っていないか | 依存による停滞 |
| 想定と違ったことはあるか | 早期のリスク |
「順調です」で終わらせません。 止まっている作業は、たいてい他人の返事を待っています。そこを外すのがPMの仕事です。
4. やらなくてよいこと
| やりがちなこと | なぜ避けるか |
|---|---|
| 実装の細部に口を出します | 担当者のほうが詳しいです。判断の質が下がります |
| 全部自分で確認します | 自分がボトルネックになります |
| 進捗を毎日聞いて回ります | 作業時間を削り、信頼も減ります |
| 議事録を清書します | 決定と宿題だけでよいです |
| 全員を全会議に呼びます | 関係ない人の時間を奪います |
| 悪い情報を止めます | 遅れるほど選択肢が減ります |
悪い知らせは早く上げます。 遅れを隠して挽回を試みると、判断の機会を失います。「今のままだと2週間遅れる。対策は3つある」と早い段階で出すほうが、結果的に信頼されます。
5. うまくいっていないときの動き方
遅れている
まず原因を1つに特定します。人手か、仕様か、待ちかを確かめます。
| 原因 | 打ち手 |
|---|---|
| 人手が足りません | 範囲を削ります。人を増やしても、終盤では効かないことが多いです |
| 仕様が決まりません | 決める会議を設定します。決まらないなら仮決めして進みます |
| 他者の返事待ち | 期限を切って依頼し直します。上位者に上げます |
| 想定より難しいです | 方式を変えるか、範囲を削ります |
「頑張る」で解決しません。 削るか、伸ばすか、増やすかのいずれかです。
要望が増えてきた
途中の追加要望は必ず出ます。断るのではなく、扱いを決めます。
- 要望を一覧に記録します(却下しない)
- 影響を見積もる(期間、費用)
- 今回やるか、次回に回すかを決める人に出します
- 決まったことを決定ログに書きます
「入れます」と即答しません。 影響を出してから決めます。この手順があると、追加要望が悪いものではなくなります。
関係者の意見が割れている
- 何が対立しているのかを言葉にします。 目的か、手段か、優先順位か
- 目的が一致していれば、手段は決められます
- 目的が割れているなら、上位者に判断を求めます
6. よくある失敗
| 失敗 | 起きること |
|---|---|
| やらないことを書きません | 終盤で範囲が膨らみます |
| 決定を記録しません | 同じ議論を繰り返します |
| 進捗を%で管理します | 終盤まで遅れが見えません |
| 課題に担当と期限がありません | 誰も動きません |
| 悪い情報を遅らせます | 打てる手がなくなります |
| 全部自分でやります | PMが止まると全部止まります |
| 会議が報告だけ | 決める場になっていません |
7. 最初の1週間でやること
引き継いだ、または新しく始めたときの順番は次のとおりです。
- 目的を確認します。何が達成されれば成功か、1行で書きます
- 決める人を特定します。予算、仕様、リリース可否のそれぞれ
- やらないことを書き出し、合意します
- 課題管理表を作ります。担当と期限の欄を必ず置きます
- 週次の場を設定します。曜日と時間を固定します
- 決定ログを開始します
1と2を飛ばさないでください。 目的が曖昧なまま、決める人が分からないまま進むと、終盤で必ず止まります。
まとめ
- PMの仕事は決めることと他の人が決められる状態を作ること
- 判断を仰ぐときは、選択肢・影響・推奨・期限を揃えて出します
- 作るものは6つです。やらないことと決定ログを軽視しません
- 進捗は「%」ではなく「何が終わったか」で聞きます
- 止まっている作業は、たいてい誰かの返事待ち
- 遅れたら、削る・伸ばす・増やすのいずれかを選びます
- 悪い知らせは早く上げます
調整役に見える仕事ですが、実際は判断の仕事です。決めないことが、いちばん高くつきます。
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