· HARUBOUYA · marketing · 9 min read
広告の費用対効果を、粗利で見る
売上に対する広告費の比率だけで判断すると、売れば売るほど赤字になる商材を伸ばしてしまいます。粗利で見る計算式と、含め忘れやすい費用を整理します。

広告の良し悪しを「広告費に対して売上が何倍か」で見ている現場は多いです。数字は出るし、管理画面にも表示されます。
ただしこの見方には穴があります。粗利率が違う商品を同じ物差しで比べていることです。
売上が5倍立っていても、粗利率が20%の商品なら赤字です。40%の商品なら黒字です。同じ数字が逆の意味を持ちます。
問題:売上基準だと商材の差が消える
| 商品 | 広告費 | 売上 | 売上/広告費 | 粗利率 | 粗利 | 差引 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A | 100,000円 | 500,000円 | 5.0倍 | 20% | 100,000円 | 0円 |
| B | 100,000円 | 400,000円 | 4.0倍 | 45% | 180,000円 | +80,000円 |
売上基準ではAが優秀に見えます。実際に利益を出しているのはBです。
売上基準の数字を目標にすると、粗利の薄い商品に予算が寄っていきます。
粗利で見る計算
粗利 - 広告費 = 貢献額判断はこの1本でよいです。比率で見たいなら次のとおりです。
貢献額 ÷ 広告費 = 貢献倍率| 貢献倍率 | 意味 |
|---|---|
| 0倍 | 広告費と粗利がちょうど同じ。増やす理由がありません |
| 1倍 | 広告費と同額の利益が残ります |
| マイナス | 売るほど損をしています |
0倍が損益分岐です。売上基準の「何倍」とは意味が違うため、同じ会議で混ぜないでください。
粗利をどこまで引くか
粗利の定義を決めないと、部署ごとに違う数字が出ます。最低限、次を売上から引きます。
| 引くもの | 理由 |
|---|---|
| 原価 | 当然 |
| 送料(自社負担分) | 送料無料の分は自社負担 |
| 決済手数料 | 決済方法によって2〜4%程度の差 |
| 返品・キャンセル | 売上に立っているが入金されません |
| 販促原資(ポイント・クーポン) | 値引きと同じ |
| モール・販売手数料 | 販路によって発生します |
返品と販促原資が抜けやすいです。この2つが抜けると、粗利が実態より1〜2割高く出ます。
引かないもの
| 引かないもの | 理由 |
|---|---|
| 人件費・家賃などの固定費 | 広告を止めても減りません |
| ツールの月額費用 | 同上 |
固定費まで引くと、広告の判断ではなく事業全体の判断になります。広告の意思決定には、広告を増減させたときに動く費用だけを入れます。
広告費に含め忘れるもの
| 含めるもの | 見落とされやすさ |
|---|---|
| 媒体への出稿費 | 含まれています |
| 代理店の手数料 | 忘れやすいです。出稿費の10〜20%程度 |
| 制作費(画像・動画・LP) | 忘れやすいです。期間で按分します |
| 計測ツールの費用 | 判断によります |
代理店手数料と制作費を入れると、貢献倍率が大きく下がることがあります。入れないと判断を誤ります。
新規と既存を分ける
粗利で見ても、1回の購入だけで判断すると新規獲得が全部赤字に見えます。
| 見る単位 | 使う場面 |
|---|---|
| 初回購入の粗利 | 短期の資金繰り。回収期間の確認 |
| 一定期間の累計粗利 | 新規獲得の可否判断 |
累計で見る場合、期間を先に決めます。「1年以内の累計粗利が獲得コストを上回るか」のように、期間と条件を固定します。期間を都合よく伸ばせば、どんな施策も黒字になります。
やること
手順1. 粗利率の一覧を作る
商品カテゴリ単位でよいです。細かくしすぎると更新が続きません。
| カテゴリ | 粗利率 |
|---|---|
| A群 | 45% |
| B群 | 32% |
| C群 | 20% |
手順2. 広告の成果に粗利率を掛ける
広告の管理画面から成果を出し、商品カテゴリごとに粗利率を掛けて合算します。表計算ソフトで十分です。自動化は、続けると決めてからでよいです。
手順3. 判断の基準を先に決める
継続する:貢献倍率 0.3倍以上
様子を見る:0〜0.3倍。2週間で再判定
止める:マイナスが2週間続いた場合基準を先に決めます。結果を見てから決めると、止める判断ができなくなります。
手順4. 月次で1枚にまとめる
| 媒体・キャンペーン | 広告費 | 粗利 | 貢献額 | 貢献倍率 | 判断 |
|---|
この1枚で会議が終わる形にします。
失敗例
| 失敗 | 何が起きるか | 代わりにやること |
|---|---|---|
| 売上基準の倍率だけで判断します | 粗利の薄い商品に予算が寄ります | 粗利から広告費を引いた貢献額で見ます |
| 返品と販促原資を引きません | 粗利が1〜2割高く出ます | 売上から先に引きます |
| 代理店手数料と制作費を入れません | 実際より良く見えます | 広告費に含めます |
| 固定費まで引きます | 広告の判断ができなくなります | 増減で動く費用だけを入れます |
| 累計の期間を決めずに見ます | どんな施策も黒字にできてしまいます | 期間と条件を先に固定します |
| 止める基準を後から決めます | 赤字の広告が残り続けます | 開始前に基準を書きます |
まとめ
- 売上基準の倍率は、粗利率の違う商品を同じ物差しで比べています
- 判断は「粗利 - 広告費 = 貢献額」の1本で足ります
- 売上から引くのは、原価・送料・決済手数料・返品・販促原資・販売手数料
- 返品と販促原資が抜けやすいです。抜けると粗利が1〜2割高く出ます
- 固定費は引きません。広告の増減で動く費用だけを入れます
- 広告費には代理店手数料と制作費を含めます
- 累計で見るなら期間を先に固定します。伸ばせばどんな施策も黒字になります
最初にやることは、商品カテゴリごとの粗利率を一覧にすることです。この表がないと、どんな分析も売上基準から抜け出せません。
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