· HARUBOUYA · marketing · 14 min read

BtoBのカスタマージャーニーは、BtoCと同じに書けない

BtoBは買う人と使う人が違い、決める人が複数います。BtoCとの違いと、企業規模による違いを整理します。

BtoBのカスタマージャーニーを表すイメージ

カスタマージャーニーを作ろうとして、BtoCの型をそのまま持ち込むと合わなくなります。理由は単純で、BtoBでは買う人と使う人が別であり、決める人が1人ではないためです。

BtoCとの違いと、相手の企業規模による違いを整理します。

1. BtoCとの違い

違いの全体像

BtoCBtoB
買う主体個人組織
関わる人数1人(ときに家族)3〜10人以上
検討期間数分〜数週間数か月〜1年以上
判断の基準好き、欲しい費用対効果、稟議が通るか
失敗したとき自分が損します社内で責任を問われます
買ったあと使って終わり導入・定着・更新が続きます

もっとも影響が大きいのは**「失敗したときに責任を問われる」という点です。BtoBの担当者は、良いものを選ぶよりも説明できるものを選びます**。ここを踏まえないと、ジャーニー上の施策が的を外します。

登場人物が複数いる

BtoCでは1人の頭の中を追います。BtoBでは役割の違う複数人を追います。

役割やること気にすること
起案者課題を見つけ、調べ始めます自分の業務が楽になるか
利用者実際に使います覚えることが増えないか
決裁者予算を承認します金額、投資回収、リスク
情報システム技術面を審査しますセキュリティ、既存との連携
購買・法務契約を審査します契約条件、反社確認、規程適合

この5者は、見たい資料が全く違います。 起案者向けの資料しか用意していないと、決裁の段階で止まります。逆に決裁者向けの数字だけでは、起案者が社内で説明できません。

ジャーニーには**「誰のどの段階か」**を書きます。1本の線では表せません。

検討の段階が長く、逆流する

BtoCは「認知→興味→比較→購入」で概ね進みます。BtoBは行き来します。

課題の認識
   ↓
情報収集(ここで一度止まることが多い)
   ↓
社内での問題提起  ← 却下されて振り出しに戻る
   ↓
選定・比較
   ↓
稟議・見積      ← 予算が付かず翌年度に持ち越し
   ↓
契約
   ↓
導入・定着      ← ここが失敗すると更新されない
   ↓
更新・追加

「翌年度に持ち越し」が普通に起きます。 半年前に問い合わせた相手が、今期の予算で戻ってきます。だから短期のCV数だけで判断すると、施策の評価を誤ります。

見る数字も変わる

BtoCで見ますBtoBで見ます
CVR、客単価商談化率、受注率
購入までの日数リードタイム(数か月単位)
リピート率更新率、追加契約率
離脱ページ止まった段階(どこで検討が止まったか)

BtoBでは、**問い合わせ数よりも「商談に進んだ数」**が重要になります。資料請求が増えても、商談にならなければ事業の数字は動きません。

実務での違い

やることBtoCBtoB
コンテンツ商品の魅力を伝えます社内説明に使える材料を渡します
事例使用感、口コミ同業・同規模の導入事例、数字
価格明示します概算レンジがあると検討に乗りやすいです
問い合わせ導線購入ボタン資料DL、相談、見積の3段階
フォローメルマガ検討段階に応じた個別連絡

**「社内説明に使える材料を渡す」**がBtoBの核です。起案者は社内で説明する立場にあります。そのまま稟議に添付できる資料(費用の内訳、導入スケジュール、他社事例、セキュリティチェックの回答)があると、検討が進みます。

2. 大企業と中小企業の違い

同じBtoBでも、相手の規模でジャーニーは大きく変わります。

違いの全体像

中小企業大企業
決める人経営者、または現場責任者複数部門の合議
関わる人数1〜3人5〜15人
検討期間数週間〜2か月半年〜1年
予算その場で判断できることがあります年度予算に組まれていないと動きません
審査少ないです情シス、法務、購買、監査
判断軸すぐ効くか、手間が増えないか全社標準に合うか、統制が取れるか
導入現場が使い始めれば完了部門展開の設計が必要

中小企業のジャーニー

決裁が速いです。経営者が起案者と決裁者を兼ねることも多いです。一方で専任の担当者がいません。

段階起きていること必要なもの
課題認識現場が困っている、人手が足りません同規模の事例
情報収集調べる時間がありません短く要点だけの資料
相談電話やフォームで直接聞きます早い返信
判断経営者が決めます月額と効果の目安
導入現場が兼務で進めます手順書と初期設定の支援

ここでの失点は導入の段階に集まります。契約しましたが、設定する人がいなくて使われないまま終わります。中小企業向けでは、導入支援まで含めて設計します。

大企業のジャーニー

決裁は遅いですが、通れば大きいです。特徴は年度予算と審査の多さです。

段階起きていること必要なもの
課題認識部門内で問題が挙がります業界動向、他社事例
情報収集担当者が複数社を比較します比較しやすい形の資料
社内提起上位者に相談します稟議に使える資料一式
技術審査情シスがセキュリティを確認チェックシートへの回答、体制の説明
契約審査法務・購買が条件を見ます契約書案、規程への適合
稟議決裁ラインを上がります投資回収の試算
予算年度予算に組みます時期を合わせます
導入検証部門から始めます段階展開の計画
展開他部門へ広げます教育資料、問い合わせ窓口

年度予算のタイミングが最大の関門です。 多くの企業で、翌年度の予算は数か月前に固まります。その時期を外すと、良い提案でも1年待ちになります。大企業向けでは、予算編成の時期を相手に確認することが、提案内容と同じくらい効きます。

技術審査も見落とされやすいです。セキュリティチェックシートの回答に時間がかかると、そこで検討が止まります。回答の雛形を先に用意しておきます。

規模ごとの打ち手

中小企業大企業
最初に渡すものA4 1枚の概要比較表と事例集
響く事例同規模・同業種同業の大手
価格の見せ方月額を明示レンジ+個別見積
用意しておくもの導入手順書セキュリティ回答、契約書案
時期の考え方困ったときが検討時予算編成の時期に合わせます
導入の設計初期設定の代行検証→部門→全社の段階展開

3. ジャーニーを作るときの手順

  1. 対象を1つに絞ります。「中小企業の現場責任者」など、規模と役割で指定します
  2. 役割ごとに列を作ります。起案者・利用者・決裁者・情シスを分けて書きます
  3. 段階ごとに「何を知りたいか」を書きます。自社が渡したいものではなく、相手が知りたいこと
  4. 止まる場所を書き込みます。予算、技術審査、社内の反対
  5. 止まる場所に対する手を1つずつ用意します
  6. 数字を紐づけます。段階ごとに、何件が次に進んだかを測れる形にします

5と6が抜けたジャーニーは、作って終わりになります。 止まる場所と測り方がないと、施策につながりません。

4. やりがちな失敗

失敗何が起きるか
BtoCの型をそのまま使います決裁者と情シスが抜け、稟議で止まります
1本の線で書きます役割ごとの必要情報が見えません
検討期間を短く見積もります短期のCV数で判断し、施策を早く切ってしまいます
規模を分けません大企業向けの資料を中小企業に渡し、読まれません
導入後を書きません定着せず、更新されません
理想の流れだけ書きます止まる場所が見えず、打ち手が出ません

まとめ

  • BtoBは買う人と使う人が違い、決める人が複数います
  • 担当者は良いものより説明できるものを選びます。社内説明の材料を渡します
  • 検討は逆流し、年度をまたぎます。短期のCV数だけで評価しません
  • 見る数字は商談化率・受注率・止まった段階
  • 中小企業は決裁が速く、導入で詰まります。導入支援まで設計します
  • 大企業は年度予算と技術審査が関門です。時期と回答の雛形を先に用意します
  • ジャーニーには止まる場所と測り方を必ず入れます

ジャーニーは絵を作ることが目的ではありません。どこで止まっているかを共通認識にするための道具として使います。

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