· HARUBOUYA · marketing · 13 min read
アンケート結果を意思決定に使える形にする
集計して円グラフを並べても、何も決まりません。設問の作り方、集計の粒度、クロス集計で見るところ、そして「差がある」と言ってよい条件を書きます。

アンケートを取って、設問ごとに円グラフを並べた資料があります。よく見るが、あれを見ても何も決まりません。
決まらない理由は集計の仕方ではなく、設問を作る前に「何を決めるためのアンケートか」が定まっていないことです。順に書きます。
問題:設問から作り始める
多いのは次の流れです。
聞きたいことを書き出す → 設問にする → 配る → 集計する → 円グラフを並べる → 「で、どうする?」最後で止まります。集計できても、選択肢が出てきません。
正しくは逆から作ります。
決めたいこと → 選択肢を書き出す → どの数字が出たらどちらを選ぶか決める → 設問にする例
| 決めたいこと | 選択肢 | 判断の条件(先に決めます) |
|---|---|---|
| 送料無料の基準額を下げるか | 下げる/据え置き | 「送料が理由でやめた」が3割を超えたら下げます |
| 問い合わせ窓口をチャットにするか | 追加する/しません | 電話以外を希望する人が過半数なら追加 |
| 商品説明に動画を足すか | 足す/足しません | 「情報が足りない」の上位3つに素材の質感が入れば足します |
判断の条件を先に決めます。これを決めずに集計すると、結果を見てから都合よく解釈することになります。
設問の作り方
聞いてよいこと、聞いても意味がないこと
| 種類 | 例 | 使えるか |
|---|---|---|
| 実際にやったこと | 「直近3か月で購入しましたか」 | 使えます |
| 実際に起きたこと | 「どこで手が止まりましたか」 | 使えます |
| 満足度 | 「満足していますか」 | 弱いです。全体の傾向把握まで |
| これからの意向 | 「あったら使いますか」 | ほぼ使えません。実際の行動と一致しません |
| 価格の意向 | 「いくらなら買いますか」 | 単独では使えません |
「あったら使いますか」には、多くの人が「使う」と答えます。答えが行動を予測しない設問は、載せるだけ回答の負担になります。
設問数の目安
| 回答者 | 上限の目安 |
|---|---|
| 一般の利用者 | 10問、3分以内 |
| 既存の顧客 | 15問、5分以内 |
| 社内 | 20問程度まで |
長いほど、後半の回答が雑になります。判断に使わない設問は削ります。
選択肢の作り方
- 「その他」の自由記述を必ず置きます。想定外はここに出ます
- 「どちらでもない」を入れるかは、判断の条件次第です。無理に選ばせたいなら入れません
- 順序のある選択肢(5段階など)は、途中で並びを変えません
集計の粒度
全体の集計だけでは、まず判断できません。
| 集計の仕方 | 分かること |
|---|---|
| 全体 | 傾向。ただし打ち手にはつながりにくいです |
| 属性別 | 誰に効く施策かが決まります |
| 行動別 | いちばん実用的。買った人と買わなかった人で分けます |
| 自由記述 | 想定していなかった論点が出ます |
行動別に分けるのが最も効きます。「購入した人/検討してやめた人」で同じ設問の答えを並べると、差が出た項目がそのまま打ち手になります。
クロス集計で見るところ
2つの設問を掛け合わせた表を作ります。
| 購入した(120人) | やめた(80人) | |
|---|---|---|
| サイズが分かりにくいです | 18人(15%) | 36人(45%) |
| 送料が高いです | 24人(20%) | 20人(25%) |
| 届くのが遅いです | 12人(10%) | 8人(10%) |
見るのは列ごとの割合の差です。上の例なら「サイズが分かりにくい」が15%対45%で大きく開いています。送料と配送は差が小さいです。
つまり、この結果から動かすべきはサイズの案内であって、送料ではありません。全体集計だけ見ていると、回答数の多い送料に目が行きます。
「差がある」と言ってよい条件
割合が違って見えても、人数が少なければ偶然の範囲です。
| 各グループの人数 | 差の目安 |
|---|---|
| 30人未満 | 参考程度。数字で語りません |
| 30〜100人 | 15ポイント以上の差なら傾向として扱えます |
| 100〜300人 | 10ポイント以上 |
| 300人以上 | 5ポイント以上 |
これは厳密な検定ではなく、社内の判断で使うための目安です。正式に「有意差がある」と言うなら、カイ二乗検定などを使って確かめます。
言い方も揃えます。
| 状況 | 書き方 |
|---|---|
| 人数が十分で差も大きいです | 「購入しなかった層で3倍多いです」 |
| 人数が少ないです | 「回答は少ないですが、同じ指摘が7件ありました」 |
| 差が小さいです | 「差は見られませんでした」 |
「〜の傾向が見られる」で濁さないでください。差があるか、ないか、判断できないかの3つで書きます。
自由記述の扱い方
- 全部を1列に並べます
- 似た内容をまとめ、見出しを付ける(例:サイズ、配送、価格、使い方)
- 見出しごとに件数を数えます
- 件数の多い順に並べ、それぞれ実際の書き込みを1〜2件そのまま載せます
要約だけにしません。生の言葉が1行あるだけで、読み手の納得が変わります。
やること
手順1. 1枚の紙に3行書く
決めたいこと:
選択肢:
どの数字が出たらどちらを選ぶか:この3行が埋まらないうちは設問を書かないでください。
手順2. 集計の形を先に作る
回答が0件の状態で、出したい表を作っておきます。
| グループA | グループB | |
|---|---|---|
| 設問1の選択肢1 | ||
| 設問1の選択肢2 |
この表が作れなければ、設問の設計に足りないものがあります。
手順3. 5人に先に答えてもらう
配る前に、社内の5人に答えてもらい、次を確認します。
- 意味が分からない設問がないか
- 選びたい選択肢がないものがないか
- 何分かかったか
手順4. 回答を止める条件を決める
「1週間」か「200件」か、先に決めます。集まり方を見てから延ばすと、期間の違う回答が混ざります。
失敗例
| 失敗 | 何が起きるか | 代わりにやること |
|---|---|---|
| 設問から作り始めます | 集計しても選択肢が出てきません | 決めたいことと判断条件を先に書きます |
| 「あったら使いますか」を聞きます | ほぼ全員が「使う」と答え、判断に使えません | 実際にやったこと・起きたことを聞きます |
| 全体集計しか見ません | 回答数の多い項目に引きずられます | 購入した人/しなかった人で分けます |
| 人数を書かずに割合だけ出します | 3人中2人が67%になります | 割合の横に必ず人数を書きます |
| 少ない回答数で差を語ります | 偶然を施策の根拠にします | 人数に応じた差の目安を決めておきます |
| 自由記述を要約だけにします | 納得されず、議論が戻ります | 実際の書き込みを1〜2件そのまま載せます |
| 集まりが悪いので期間を延ばします | 条件の違う回答が混ざります | 締め切りを先に決めて守ります |
まとめ
- アンケートは決めたいことから逆に作ります。設問から作ると集計しても決まりません
- 「どの数字が出たらどちらを選ぶか」を配る前に決めておきます
- 意向を聞く設問は行動を予測しません。実際にやったこと・起きたことを聞きます
- 行動別(買った人/やめた人)に分けるのが最も打ち手につながります
- 割合の横に必ず人数を書きます。人数が少なければ数字で語らないでください
- 「傾向が見られる」で濁さないでください。差がある/ない/判断できないの3つで書きます
- 自由記述は、件数と一緒に実際の書き込みをそのまま1〜2件載せます
最初にやることは、決めたいこと・選択肢・判断条件の3行を書くことです。これが埋まらないなら、まだアンケートを取る段階ではありません。
参考になったら、いいねを押してください。





