· HARUBOUYA · marketing · 15 min read
閲覧履歴でコンテンツを出し分けるときに決めること
出し分けの3つの型、履歴として持つデータ、実装方式の違い、事故になりやすい条件、効果の測り方までを整理します。

「見ている人に合わせて、表示する内容を変えたい」という相談は多いです。仕組み自体は難しくありませんが、決めずに始めると運用で行き詰まる種類の施策でもあります。
ルールが増えて誰も全体を把握できなくなる、在庫のない商品を出し続ける、効果が測れません。よくある詰まり方は決まっています。
閲覧履歴による出し分けを、設計する側の視点で整理します。
1. 出し分けの3つの型
一括りに「パーソナライズ」と呼ばれますが、中身は3種類に分かれます。必要なデータも手間も違います。
| 型 | 内容 | 必要なもの | 手間 |
|---|---|---|---|
| ルールベース | 条件を人が決めて出し分けます | 条件に使うデータ | 小 |
| セグメント | 利用者をいくつかの型に分け、型ごとに出します | 分類の設計 | 中 |
| レコメンド | 行動データから機械的に推薦します | 十分な行動量 | 大 |
最初に手を付けるのはルールベースです。「特定のカテゴリを3回以上見た人に、そのカテゴリの特集を出す」といった単純な条件でも、効果は出ます。
いきなりレコメンドから始めません。 データ量が足りないと、推薦の質が上がらないまま費用だけがかかります。
2. 何を履歴として持つか
出し分けの条件に使えるものを整理します。
| データ | 例 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 閲覧したカテゴリ | 特定のカテゴリを3回見ました | 興味の推定 |
| 閲覧した個別ページ | 特定の商品ページを見ました | 再訪時の続き表示 |
| 検索した語 | サイト内検索の入力 | 意図が最もはっきり出ます |
| 購入・申込の履歴 | 過去の注文 | 再購入、関連提案 |
| 来訪回数 | 初回、2回目以降 | 初回向けの案内 |
| 最終来訪からの日数 | 30日以上空いました | 復帰の促し |
| 流入元 | 広告、検索、メール | 文脈に合わせた表示 |
サイト内検索の語は、最も強い手がかりになります。閲覧は偶然でも起きるが、検索は自分で言葉にした行動のためです。
3つの軸で考える
条件を作るときは、次の3つで整理すると迷いません。
| 軸 | 見るもの | 例 |
|---|---|---|
| 直近性 | いつ見たか | 今日見た > 3か月前に見ました |
| 頻度 | 何回見たか | 5回見た > 1回見ました |
| 意図の強さ | どんな行動か | カート投入 > 検索 > 閲覧 |
古い履歴を重く扱わないでください。 3か月前に一度見ただけのカテゴリを推し続けると、的外れな表示になります。
3. 実装の方式
大きく2通りあります。見た目と計測の両方に影響するため、先に決めます。
| 方式 | やり方 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|---|
| サーバー側で出し分け | 配信する時点で内容を切り替えます | ちらつかない、速いです | 開発が必要 |
| ブラウザ側で差し替え | 表示後にスクリプトで書き換えます | 開発なしで始められます | 一瞬元の内容が見えます |
ブラウザ側で差し替える方式は、接客ツールを使えばすぐ始められます。ただし注意点があります。
- 表示後に書き換わるため、一瞬ちらつきます(元の内容が見えてから切り替わる)
- 差し替えで要素の高さが変わると、画面がガタつきます。読んでいる最中に押す場所がずれます
- 読み込みが遅いと、切り替わる前に離脱されます
対策として、差し替える領域の高さをあらかじめ確保しておく、初期表示を空にせず共通の内容を置いておく、といった設計にします。
検証はまず差し替え方式で行い、効果が確認できたらサーバー側に移す、という進め方が現実的です。
4. ルールの例
実際に使われる条件を挙げます。
| 条件 | 出すもの |
|---|---|
| 初回訪問 | サービスの説明、初回向けの案内 |
| 特定カテゴリを3回以上閲覧 | そのカテゴリの特集、人気順 |
| 商品ページを見たが購入なし、7日以内 | その商品と関連商品 |
| カート投入したが未購入 | カートの中身の通知 |
| 購入から30日経過 | 消耗品の再購入、関連商品 |
| 60日以上来訪なし | 更新情報のまとめ |
| 特定の語で検索 | 該当カテゴリへの導線 |
条件は重なります。 どれを優先するかを決めておかないと、複数のルールが同時に当たって表示が競合します。
5. 事故になりやすい条件
出し分けは、間違えると何もしないより悪い結果になります。
| 状況 | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 在庫のない商品を出します | 押した先で買えません | 在庫データと突き合わせます |
| 購入済みの商品を出し続けます | 買ったものを勧められます | 購入履歴で除外します |
| 値下げ前の価格を表示 | 表示と実際が違います | 価格は都度取得します |
| 家族で共有している端末 | 別人の履歴で出し分けられます | 強すぎる断定を避けます |
| 1つの興味に寄りすぎます | 同じものばかり出て飽きられます | 一定割合で別の内容を混ぜます |
| ログイン前後で別人扱い | 履歴が引き継がれません | 識別子の扱いを設計します |
在庫と価格は必ず突き合わせる
出し分けの仕組みが持っているデータは、たいてい少し古いです。 商品情報を出す場合は、表示の時点で在庫と価格を確認する経路を用意します。ここを省くと、機会損失ではなく信用の問題になります。
ログイン前後の扱い
同じ人でも、ログイン前は端末単位、ログイン後は会員単位で識別されます。ここをつながないと、ログインした瞬間に履歴がリセットされたように見えます。
どの識別子を主に使うか、いつ紐づけるかを最初に決めます。 あとから直すのは手間がかかります。
6. プライバシーへの配慮
閲覧履歴は個人の関心が表れるデータです。扱いには前提があります。
- 取得と利用の目的をプライバシーポリシーに書きます。 「閲覧履歴に基づく表示の最適化」と明記します
- 地域や取得方法によっては、同意の取得が必要になります。該当する場合は同意管理の仕組みを先に入れます
- 推測を表に出さないでください。 「〇〇に興味がありますね」のような直接的な表現は、監視されている印象を与えます
- 健康、信条、資産など、扱いに注意が必要な分野の推測は使いません
- 出し分けを停止できる導線を用意します
技術的にできることと、やってよいことは別です。迷ったら控えめにします。
7. 効果の測り方
「出し分けたら売上が上がった」は、そのままでは根拠になりません。他の要因も同時に動いているためです。
比較できる形にする
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| A/Bテスト | 対象者をランダムに分け、出し分けあり/なしを比較します |
| 期間比較 | 導入前後を比較します。他の施策の影響を受けるため精度は落ちます |
可能ならA/Bテストにします。 一定割合を「出し分けなし」のまま残すと、効果を継続的に確認できます。
見る指標
| 段階 | 指標 |
|---|---|
| 表示 | 表示された回数 |
| 反応 | クリック率 |
| 成果 | 遷移後のCVR、売上 |
| 全体 | サイト全体のCVR、離脱率 |
部分の数字だけを見ません。 出し分け枠のクリック率が上がっても、他の導線を押しのけていれば全体は変わりません。サイト全体の数字と両方を見ます。
計測の設計
出し分けをした結果を測るには、どの人にどのパターンが出たかを記録する必要があります。
- 出し分けの識別子(どのルールが当たったか)をイベントに含めます
- 差し替え方式の場合、差し替え前に計測タグが動いていないかを確認します
- パターンごとに集計できるよう、分析側のデータ構造を先に決めます
ここを後回しにすると、「効果があった気がする」で終わります。
8. 運用で詰まらないために
ルールは増えます。増えたあとに困らない形にしておきます。
| やること | 内容 |
|---|---|
| 一覧を作ります | 条件、出す内容、開始日、担当者、狙う指標 |
| 優先順位を決めます | 条件が重なったときにどれを出すか |
| 期限を決めます | 季節ものは終了日を設定します |
| 定期的に見直します | 3か月に1回、効果のないルールを止めます |
| 数を絞ります | 同時に動かすのは10本程度まで |
止める作業を誰もやらないことです。 始めるときに終了条件を書いておくと、自然に止まります。
まとめ
- 出し分けはルールベース・セグメント・レコメンドの3種類です。最初はルールベースから
- 条件は直近性・頻度・意図の強さで整理します。古い履歴を重く扱わないでください
- 実装はサーバー側とブラウザ側の差し替えの2通りです。差し替えはちらつきと画面のガタつきに注意
- 在庫と価格は表示時点で突き合わせます。買えないものを出すのは信用の問題になります
- ログイン前後の識別子の扱いを最初に設計します
- プライバシーポリシーへの記載と、必要な場合の同意取得を先に行います
- 効果はA/Bテストで測ります。部分の数字だけでなく全体も見ます
- ルールには終了条件を書いておきます
出し分けは、当たると効きますが、外すと何もしないより悪いです。外したときに気づける形を一緒に作っておきます。
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