· HARUBOUYA · business · 13 min read
問い合わせフォームから商談までの管理設計
問い合わせは来ているのに商談になりません。原因は営業力ではなく、受け取ってから渡すまでの設計です。状態の持ち方と、放置を検出する仕組みを書きます。

問い合わせは月に80件来ています。商談になるのは10件です。この数字を見て「問い合わせの質が低い」という話になります。
調べると、そもそも30件が1度も連絡されていません。よくある状態です。
問題は営業力でも問い合わせの質でもなく、受け取ってから渡すまでの設計です。順に整理します。
問題:受け取った後が管理されていない
| よくある状態 | 何が起きるか |
|---|---|
| 通知メールだけで運用しています | 見落とすと、そのまま消えます |
| 誰が対応するかが決まっていません | 全員が「誰かが対応している」と思います |
| 対応したかどうかが記録されません | 二重連絡と未連絡が同時に起きます |
| 対応の期限がありません | 1週間後に連絡して、もう他社で決まっています |
最初の接触までの時間が、商談化率に最も強く効きます。仕組みの目的は、この時間を短くすることに絞ってよいです。
状態の持ち方
問い合わせ1件に、次の状態を持たせます。段階は増やさないでください。
| 状態 | 意味 | 次にやること |
|---|---|---|
| 未対応 | 受け取っただけ | 担当を決めて連絡します |
| 連絡済み | 1回目の連絡を出しました | 返信を待つ/追います |
| 商談化 | 打ち合わせの予定が入りました | 商談として管理します |
| 保留 | 時期が来ていません | 再接触の日付を持たせます |
| 対象外 | 提供できない/競合/営業 | 理由を記録して終了 |
「保留」に再接触の日付を必ず持たせます。日付のない保留は、実質的に消えたのと同じです。
持たせる項目
| 項目 | 用途 |
|---|---|
| 受付日時 | 対応までの時間を測ります |
| 流入経路 | どの施策からか |
| 担当者 | 誰が対応するか |
| 初回連絡日時 | 対応までの時間を測ります |
| 状態 | 上の5つ |
| 対象外の理由 | 改善の材料 |
| 再接触日 | 保留の場合のみ |
「対象外の理由」を記録します。ここがたまると、広告のキーワードやフォームの設問を直す材料になります。
割り当てのルール
誰が対応するかを、受け取った瞬間に決めます。
| 決め方 | 向く場面 |
|---|---|
| 順番に割り当てます | 担当に差がない場合 |
| 地域・業種で分けます | 担当が分かれている場合 |
| 規模で分けます | 大口だけ別の担当 |
| 全員に通知して先着 | 避けます。誰も取らないことがあります |
最後の方式を避けます。「全員に通知=誰の責任でもない」になります。
期限を決める
| 状態 | 期限 |
|---|---|
| 未対応 → 連絡済み | 営業時間内で4時間以内 |
| 連絡済み → 返信なし | 3営業日後に2回目 |
| 2回目も返信なし | 7営業日後に3回目 |
| 3回で返信なし | 保留へ。再接触日を90日後に設定 |
「連絡が付かない」で終わらせません。3回の接触までを仕組みに入れ、それでも付かなければ保留に落とします。落とす先があるから、未対応がたまりません。
重複の扱い
同じ人・同じ会社から複数の問い合わせが来ます。
| 状態 | 扱い |
|---|---|
| 同一メールアドレスで再送信 | 既存の1件に統合。二重連絡を防ぎます |
| 同じ会社の別の人 | 別件として扱いますが、関連を記録します |
| 既存顧客からの問い合わせ | 営業ではなくサポートへ回します |
既存顧客を新規として扱わないでください。新規獲得の数字が実態より良く見えるうえ、顧客に既知の説明を繰り返すことになります。
放置を検出する
仕組みの中心はここです。人が気をつけるのではなく、検出します。
| 検出する条件 | 通知先 |
|---|---|
| 受付から4時間、未対応のまま | 担当者と上長 |
| 連絡済みから7日、状態が変わりません | 担当者 |
| 再接触日を過ぎた保留 | 担当者 |
| 担当が未設定のまま1時間 | 全体の管理者 |
通知は失敗しているものだけにします。「今日の新規5件」のような通知を毎日出すと、見られなくなります。
見る数字
週に1回、次の4つだけ見ます。
| 数字 | 見る理由 |
|---|---|
| 初回連絡までの中央値 | 仕組みが機能しているか |
| 4時間以内に連絡できた割合 | 同上 |
| 商談化率 | 経路別に出します |
| 対象外の理由の内訳 | 上流を直す材料 |
平均ではなく中央値を見ます。1件の極端な遅れで平均が動くと、実態が見えません。
やること
手順1. まず未対応の件数を数える
いま何件が未対応で残っているかを数えます。この数が、いちばん最初に改善できる数字です。
手順2. 状態を持つ場所を1つに決める
| 選択肢 | 向く規模 |
|---|---|
| 表計算ソフト | 月20件まで |
| 顧客管理ツール | 月20件以上 |
| 既存の案件管理ツールを流用 | すでにあるなら十分 |
新しいツールを入れることから始めません。表計算ソフトでも、状態と期限があれば機能します。
手順3. フォームの設問を見直す
割り当てと対象外の判定に必要な項目だけを聞きます。
| 聞きます | 聞きません |
|---|---|
| 会社名 | 役職(後で聞けます) |
| 氏名 | 従業員数(後で聞けます) |
| メールアドレス | 予算(答えません) |
| 電話番号 | 検討時期(答えが当てになりません) |
| 問い合わせ内容(自由記述) | アンケート項目 |
設問を増やすと件数が減ります。増やすなら、その設問で判断が変わる場合だけです。
手順4. 対象外の理由を月1回集計する
| 理由 | 件数 | 上流の直し方 |
|---|---|---|
| 提供できない地域 | 12 | 広告の配信地域を絞ります |
| 求人の応募 | 8 | 採用ページへの導線を分けます |
| 営業の連絡 | 6 | フォームに一文を入れます |
| 個人からの依頼 | 5 | 対象を明記します |
この表が、問い合わせの質を上げる唯一の材料です。質が低いと嘆く前に、理由を数えます。
失敗例
| 失敗 | 何が起きるか | 代わりにやること |
|---|---|---|
| 通知メールだけで運用します | 見落とした件がそのまま消えます | 状態を持つ場所を1つ作ります |
| 全員に通知して先着で対応します | 誰も取らない件が出ます | 受け取った瞬間に担当を決めます |
| 期限を決めません | 1週間後に連絡し、他社で決まっています | 4時間以内を基準にします |
| 保留に日付を持たせません | 実質的に消えます | 再接触日を必ず入れます |
| 既存顧客を新規として扱います | 新規の数字が実態より良く見えます | 判定して振り分けます |
| 毎日の件数を通知します | 見られなくなります | 遅れている件だけ通知します |
| 平均で見ます | 1件の遅れで実態が見えなくなります | 中央値で見ます |
| 対象外の理由を残しません | 上流を直せません | 月1回集計します |
まとめ
- 商談にならない原因は、受け取ってから渡すまでの設計にあることが多いです
- 状態は5つで足ります。未対応/連絡済み/商談化/保留/対象外
- 「保留」には再接触日を必ず持たせます。日付のない保留は消えたのと同じ
- 割り当ては受け取った瞬間に決めます。全員通知の先着は避けます
- 3回の接触までを仕組みに入れ、付かなければ保留へ落とします
- 通知は遅れている件だけにします。毎日の件数通知は見られなくなります
- 見るのは初回連絡までの中央値、4時間以内の割合、経路別の商談化率、対象外の理由
- 質を上げる材料は、対象外の理由の集計しかありません
最初にやることは、いま未対応で残っている件数を数えることです。その数がそのまま、いちばん取りやすい改善になります。
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